- April 27, 2013
4/14 Rishikesh/India Day3
日付は変わらず引続き流浪。
そういえば聖地に着いたとはいえ、すっかり電車で体力を奪われているのは間違い無い。
思っていたよりもずっと広いリシケシに荷物を抱え炎天下の中ふらふらふらふらと彷徨うのにも限界が有る。
ある程度迄歩いた物の埒が空かぬと思い少々ガンガーで寄道。
脚を冷やす。
思っていたよりも水は冷たく澄んでいる。
聖地と言うか、本当にビーチリゾートと言った風景。
皆水遊びに興じている中、もやもやとしながらリゾート下手で宗教観も碌に無いこの東洋人は何をすれば良いのだろうと悩む。
何せ一人だ。水を掛ける相手も居ない中ではしゃぐのにも限度が有る。
そういえば川の傍にアーユルヴェーダ(所謂オイルマッサージ)が有った。
そうか折角来たのだからもうこのリゾートで、リゾート感丸出しもそれはそれで面白いではないか。
そう思い覗いてみると、其処にぬぉっと出て来たのは長髪をポニーテールに縛った、なんとも言えない男。
プロレスのマスクマンが覆面を外した時の様な顔でもある。
頭の中には、磯男(いそお)という渾名が浮かんだ。
モリを携えている様な風体だ。
磯男、薄暗い入口に何とも言えない図体。
誰がやるの?と聴くと、マッサージは私が担当します。と。
磯男か。磯男以外に選択肢無しか。。
実際に話す磯男は外見では想像がつかない優しさなのだが、来てくれれば安くするよと言ってくれた。
成程そうか。
なんとなくリゾート地でもあるし、入口の写真で見られる様なラベンダーに囲まれた白人女性がゆったりと施術を受けているイメージを想像していたものの、これは違うな。
川なのに磯の臭いがするのだよ。感覚的に。
モリで取ったワカメとか肌に塗られそうだ。
取敢えず考えてみるよと言って外に出る。
其処からリキシャに乗り漸く上のアシュラムへ。
アシュラムと言うのはヨガの道場なのだけれど、寄付制で其処に宿泊する事も出来る施設だ。
ヨガの資格を取る為に長期滞在する人なんかも多い。
今回、お奨めされていた所に折角だから伺って観ようと思った物の、其処のアシュラムは予約は事前にしないと一杯だそう。
その後も全て他のアシュラムも埋まっている。
参った。
炎天下の中ウロウロして疲れ果てているとまた磯男の周辺に戻っていた。
嗚呼もうこれは呼ばれているな。
磯男に呼ばれているんだ。
あの懐かしさは多分昔親戚が経営していた海の家を思い出すからだ。
その店の持つ海の家的な雑なプレハブ感、其処に何か懐かしさを感じたからだろう。
潮っぽい畳に転がり昼寝をしていた時分を思い出す。
まぁ何度も言う様に川なんだけどもさ。
これはもう行くしか無いだろう。
磯男に判った、受けるよと伝えると磯男はちょっと待っててくれと奥に引っ込む。
中で何やら準備を始めている。
そして準備が整った磯男がドアを開けると、衝撃の出立ち。
薄暗い部屋の中の磯男、今からオペでも始めるんじゃないかって言う様な恰好でエプロンをしている。
何の施術を施されるんだ。
衝撃的だった。
何だか昔観たペニノのオペ中の恰好を思い出した。
正気か磯男。
磯男を見ると彼には至って何も笑いに転換する気は無いのだが、どうしても奇妙過ぎる。
取敢えず脱いで寝てくれと言われ、パンツ一枚突っ伏すと、何とも言えず思ったよりもぬめらないオイルでしっかりゴシゴシと施術して行く磯男。
其処には南国のリゾート感も、ヒーリングミュージックも無い。
じめっとした部屋にパンツ一枚の長谷川が磯男にひたすら揉まれていると言う、何にも装飾が無い混じりっ気の無い磯100%の状況が広がっていた。
其処からは或る意味泣寝入りである。
や、それなりにしっかりやってくれたんだけどもさ。
この状況だけ見ると、泣き寝入りと言っても過言ではない。
なにしろ外の方がよっぽどリゾートである。
近くではがたいの良い男達がゴムボートを前にラフティングをしないか?と言って来る店が多数で或る。
だが私は湿気った部屋で磯男と2人きり、頑固な汚れに擦り洗い、だ。
終った後も磯男スタイルは欠かさない。
オイルをリムーヴしたいか?と聴かれたので、うん、と答えると磯男、今私の下に敷かれてたシーツを剥取りそのシーツで私を懸命に拭く。
や、磯男、悪気は無いんだよ。凄い優しい男なのだ磯男は。
只若干磯の香りが強いだけで。
直ぐ其処はビーチ。
店を出た後に残された私は不思議な気分になっていた。
其処から徘徊。
街ではギラギラの街宣車の様な車でパレードをしていたり。
先頭では大変ダルい風情で街宣車を引張っている少年の姿が印象的。
マヂで大人良い加減にしろよ。という風情。
街中には牛が至る所に見受けられる。
宗教的に尊いので、車さえ避けて通るのだが、貴方、そんな所に鎮座しなくても。
お蔭様で牛糞を避けて歩くと言うスキルが身に付きました。
そしてビートルズが滞在していたと言うアシュラムへ。
とはいえ最早其処は運営はされていない廃墟だ。
表は封鎖されている。
だが横から若干の草を掻分け回って行くと普通に敷地内に入れてしまう。
この暗黙の了解と言うか緩さがインド的だ。
中は広大な敷地だった。
幾つもの建物が建っている。
もうファンにとっての聖地の様で、至る所に落書が。
その後食事を取って気を取直して最終的になんとか宿泊先を見付ける。
シングルルームで300Rs(約600円)。
とはいえダブルベッドでガンジス川も見える。
割に良い所だ。
其処から荷物を下ろし、散策。
リシケシには2つ吊橋の様な大橋が掛かっているのだが、そのウチの1つへ。
物凄い高さだ。
其処へひょろりと現れる猿。
観光に来た人々の前に平然と居る。
夜にはガンジス川沿いで毎日行われているアーティという祈りへ。
皆裸足になって、大音量の音楽がスピーカーから流れて来るのを聴きながら火に向かって祈る。
或る意味クラブ的なノリだ。
こういう風に日常からトリップしていたのかもしれない。
くぱぁっ。
そして若干カレーに飽きて今日は中華焼そばを食べて宿泊先へ。何処言っても中華は外れが無いから有難い。
地獄から始まった長い長い一日はこうして終わりを迎えた。
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