- December 12, 2009
小屋入り2日目。
舞台の空間に自分を馴染ませる作業は続く。
まぁ兎に角時間は掛かるのだが、此処で手を抜く訳には行かないのよ。
帰りに酒屋の前で何やら煙草の箱を持って立って居る女性が居た。
彼女は何をしているのかというと、只立って煙草の箱を持ち、何も言葉を発さず、
煙草を誰にという訳でもなく見せている。
無論通り掛る人達は概ねスルーだ。
彼女は何かを待っているのだろうか、兎に角良く判らないのだが、ジッと誰にでも無く煙草を見せつけている。
やや、これはなんだろう、出会い系やら何やらの待合せで、
彼女が持っている煙草が目印なのかしら、とか思いつつ、恐る恐る横を通り掛る。
すると彼女が着ているジャケットに、煙草の銘柄のロゴがプリントされている。
ははぁ、これで合点がいった。
要は彼女、試供品を持っていたという訳だ。
確かに今更煙草が目印ね、なんてそんな古風な待合をする事は無い。
成程。
だがしかしすぐに別の疑問が湧く。
はて、彼女は試供品を道行く方々に配りたいのなら、何故無言か。
声の1つも出して良い筈だ。
煙草ですー。でも何でも。
煙草ですー。と言われてもちょっと対処出来ないが。
ともあれ何かしらのやり方は有るだろう。
でも兎に角彼女は喋らない。
一体アレは何なのだろう。
圧倒的に地味なその姿は、ともすると何かの罠かもしれない。
あの煙草を取ろうとすると何かが作動してしまうとか。
急に100人が角を曲がって追掛けて来るとか。
軽く鼻づまるとか。
色々危険はあれども、取敢えず本番前なので軽く鼻づまるというのはちょっと避けたい。
それか彼女自身が罰ゲームをさせられているという可能性も否めない。
煙草と手は接着剤で固められているとか。
コートの下が全裸だとか。
煙草の振りをしているとか。
煙草の振り、というのは少し前衛的だと思う。
寺山先生を彷彿とさせる。
ともあれ彼女の謎は解けないままである。
明日も居たらどうしよう。
只判る事は、これだけ気にしている私には充分な広告効果を上げている事だ。
さぁ、公演に集中だ。
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